1.再選出馬表明に向け自信を強めるバイデン大統領
2月7日に行われたバイデン大統領にとっては2回目の一般教書演説(State of the Union speech)を観た。
米国の状態(State of the Union)は」という言葉に象徴されるとし、“プーチンの戦争”により生じたインフレを乗り切り、エネルギー価格や食料価格が下がっていること、雇用も伸び、起業数は過去2年で1千万件と記録的な伸びを示したと誇った。
これまでの政権が手を付けられなかったインフラ整備法や半導体のサプライチェーンを国内に築くCHIPS科学法、EV購入者に7,500ドルもの助成をするインフレ削減法といった大型財政投資法案を成立させた実績を前面に出すと共に半導体のサプライチェーンのオンショアリングなど“米国製”、“バイアメリカン”という極めて内向的なメッセージを国内に向けて強調していた。
一方で、笑顔やジョークを交えて共和党の議員に対する融和や超党派のアプローチを呼びかけも目立った。
有権者が気にしている内政課題に対するメッセージが圧倒的で、通商や国際協調の話はほとんどなかったが、プーチンの戦争は民主主義と人権というアメリカの価値への挑戦であって、それに勝利するまで支援をし続けるとの断固とした姿勢やアメリカにたてつくものは決して許さないという中国をけん制するような強い表現もまた発表が近いと見られている再選出馬に向けてのジェスチャーのようにも感じられた。
ただ、明らかに前回の一般教書演説や、それ以外の過去の演説よりもエネルギッシュで迫力があるように見受けられた。
数々の大型法案の成功やインフレ抑制のめどが立ったこと、ウクライナへの協調支援が功を奏していることなどで自信を以て臨んだということであろう。
昨年来ずっと40%台前半で留まっていた支持率も、この演説の翌週の2月13日から16日にかけて行われたNPR、PBS NewsHour及びMarist の共同世論調査では46%と昨年3月の頃の高さにまで回復している。
また昨年11月時点で次期大統領選の民主党候補としては民主党支持層の54%がバイデン以外を望んでいたが、今回の調査では半数がバイデンを推し、バイデン以外という回答は45%に留まっている。
因みに共和党支持層の望む大統領候補は42%がトランプ前大統領で、昨年11月よりも7ポイント上昇している。
バイデン大統領はこの世論調査のさらに翌週となる今週、ウクライナを電撃的に訪問し、ポーランドで反プーチンの強いスピーチを行うなど露出を強めている。
機密書類の持ち帰り問題などでメディア露出も抑えていたフェーズも終わり、再選出馬表明も近いのかもしれない。
2.米国で話題のChatGPT
米国ではChatGPTというAIに基づくコミュニケーション・情報サービスが流行ってきているというニュースを在ワシントンの法律事務所のDENTONSから得た。
テスラのイーロンマスク等の共同出資でおよそ2か月前に米国で設立されたOpenAIというAIのリサーチ会社が開発したもので、その特徴は相手がAIとは思えない自然な応答であり、あたかも本当の人間とやりとりしている感覚になるという。
ChatGPTも従来のチャットボットと同様、ネット上の多くの情報に基づいて学習していくが、特に重視しているのが人間からのフィードバックのメッセージであるという。
これは人間のフィードバックに基づく学習補強(Reinforcement Learning with Human Feedback: RLHF)テクニックに基づく機械学習のようである。
期待される適用分野として営業の売込み、特に顧客の特性に応じたパーソナライズされたマーケティングやSNSでのポスティング、技術営業が期待されている。
また創造的な業務としてエッセイを書いたり、書類を作成したり、ソフトウェアのコードを書いたりもする。
その延長線上で、既存のソフトウェアのコードのバグを特定し修正することもできるという。
直接のビジネス以外でもたとえば法律事務所でクライアントからの複雑な質問に応えたり、過去の関連事例を取りそろえたりしてくれる。
一般の消費者は普段見るチャットボットの通り一遍の対応に不満を持つ者も多いが、ChatGPTになるとその不満を解消するようなカスタマーサービスが可能になるという。
ただし、その技術はまだ成熟しているわけではなく問題やリスクも多々ある。
例えば知的所有権で守られているコンテンツを使ってしまったり、偏見を伴う不適切なコンテンツやデータを基に応答してしまうリスクである。
さらにはこのAIが提供した情報に従って損失が出た場合に、誰が賠償責任を負うのか、それを掲載した企業か、AIの開発企業か、ユーザーか、といった法的枠組みはまだ決まっていない。
従い、そうしたリスクや問題を意識して、注意深く活用していくというのが米国での現状のようである。
即ち、当分の間、人間の管理の下で活用範囲を広げていくということのようである。
AIが営業員や司法書士、弁護士に置き換わると言われて久しいが、その方向に一歩ずつ近づいてきていることも間違いないようである。
本稿を書き終えた後の21日朝の羽鳥慎一のモーニングショーでChatGPTに詳しい慶応大学の教授を招いて30分以上かけてこのAIサービスに関する解説があり、コメンテーターの人たちも利用経験がある様子でした。
知らなかったのは私だけか・・。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l 武漢市で大規模デモ発生?
香港発のマスコミ報道であり、観測報道との見方もあるが、「中国湖北省武漢市では、医療手当の削減に反対する退職高齢者を中心とした大規模デモが行われた」
との見方が出ている。
1万人規模の人々が雨の中、市政府庁舎前に繰り出し抗議の声を上げたとも報道されている。
武漢市政府は、市の医療保険制度を変更し、毎月260人民元程度支給されていた医療補助が80人民元余りに引き下げられたが、こうしたことに対する、人民の反発と見られている。
共産党政権に対する、人民の声が強まると、14億人を超える人口を持つ中国本土の政治運営に悪影響が出る危険性も出る。
l 淘汰のフェーズに入る中国の半導体産業
中国の「半導体ゴールドラッシュ」は、徐々に減速の兆しを見せるとの見方が出ている。
中国の統計によると、2022年の中国本土の半導体関連企業数は5,746社となっており、例年を上回り、2021年の3,420社から 68%増となっている。
しかし、中国では、「半導体産業の自立」というスローガンの下、半導体業界は今後、淘汰の段階に入っていく」との見方が出ているのである。
(2) 韓国/北朝鮮
l 入管対応で対立が続く中国と韓国
韓国国内では、
「中国本土の大連国際空港が、韓国からの入国者に対して、白い識別カードをつけるよう求めていることが分かった」との報道が流れている。
そもそもは、韓国政府が先月、中国からの入国者を識別する為に黄色いカードを首にかける措置を取ったことが遠因にあると言われており、この時、中国から、「中国人を差別している」
との批判が出ていたのであり、今回は中国がその報復に出たのではないかとの見方が出ている。
政府間同士だけではなく、中韓両国民のSNSでの文面を見ても、互いに相手国に対する嫌悪感やライバル意識を示しており、中韓の関係が複雑化していく可能性はある。
l メタバース産業を新成長エンジンに位置付ける韓国政府
韓国政府・科学技術情報通信部は、メタバース(仮想空間)産業の振興に向けて、今年2,233億ウォンを支援すると発表した。
関連の技術競争力確保やメタバースプラットフォームの開発、専門人材の育成に充てるとしている。
同部のオ・ヨンス・ソフトウエア政策官は、
「内外の経済環境の悪化や投資の萎縮によりメタバース産業に対する懐疑論も台頭しているが、世界市場は今なおメタバース産業を新成長エンジンとして注目している」
とコメント、支援の背景を説明している。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,295.87(前週対比-33.06)
台湾:1米ドル/30.33ニュー台湾ドル(前週対比-0.19)
日本:1米ドル/134.15円(前週対比-3.60)
中国本土:1米ドル/6.8661人民元(前週対比-0.0627)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,451.21(前週対比-18.52)
台湾(台北加権指数):15,479.70(前週対比-106.95)
日本(日経平均指数):27,513.13(前週対比-157.85)
中国本土(上海B):3,224.024(前週対比-36.649)
4.寺島実郎氏メディア登場情報
寺島実郎文庫から掲題の情報を得ましたので共有させていただきます。
下記にて、2月19日放送のMXテレビ「寺島実郎の世界を知る力」第29回放送につきまして、
YouTubeでの見逃し配信が始まっておりますので、ご連絡致します。
●TOKYO MX「寺島実郎の世界を知る力」(2023年2月19日放送)
【第29回放送】
「2023年の展望とウクライナ戦争1年への視座/全体知とは何か」
https://www.youtube.com/watch?v=YFeqA05vADs&list=PLkZ0Cdjz3KkhlIA30hZIT5Qnevsu0DBhY&index=1
また、今週末の「対談篇 時代との対話」(第23回放送・2023年2月26日(日)午前11時~)は、
江戸文化の研究者・田中優子氏(法政大学名誉教授・前総長)と
インド政治・国際政治史の研究者・竹中千春氏(立教大学法学部元教授、日印協会理事)を
ゲストにお迎えし、それぞれの研究分野の最前線で実績を積みながら、
大学教育の現場等で教育者として若い世代に向き合ってこられた経験を元に、
若い世代のポテンシャルや教育現場における課題等について、
寺島と議論致します。
ぜひご視聴頂ければと存じます。
《メディア出演情報(追加)》
■2023/2/24(金)18:20頃~
NHKラジオ第一「Nらじ」 ※うち、「特集」コーナー
特集テーマ:ウクライナ侵攻から1年 世界が向き合う課題は?
さらに、全国約500店舗の「快活CLUB」で視聴頂けます
寺島文庫オリジナル動画及び寺島文庫YouTubeチャンネルに関して、お知らせ致します。
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◆◇『学びの再出発』◇◆
~寺島文庫のオリジナル動画が
全国約500店舗の「快活CLUB」でご視聴いただけます~
【月1回更新】 2月分は27日(月)より配信予定!
今回は「課題解決の基盤となる『全体知』とは」をテーマに、
これまで寺島自身が文献研究とフィールドワークで踏み固めてきた独自の視点や、
自身の体験を体系化し著書にまとめあげていくプロセスなどに触れながら、
「全体知」の本質について語ります。
また、「今月の本棚」では、
評論家・佐高信氏との対談・第5弾(後編)をお送り致します。
今回は、『佐高信 評伝選』(旬報社、2022年~)で紹介された経営者や
作家の姿や様々な
エピソードを通じて、日本社会のあり方などについて、
寺島との対談を通じて深めます。
ぜひ快活クラブの店舗にてご視聴頂けましたらと存じます。
・詳細はこちら
https://www.terashima-bunko.com/minerva/kaikatsu-manabi.html
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