日賑グローバル・ニュースレター国内版(第319号)
1. ウィスコンシン州に見る政治分断の過熱
2. 聴くためのCDからZ世代の収集対象となったCD
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
4. 日米オンライン交流のご案内
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1.ウィスコンシン州に見る政治分断の過熱
米国のスイングステーツの1つのウィスコンシン州で、これまで4対3で保守派が主導権を握っていた州の最高裁が、保守派判事の引退に伴い4月になされた選挙でリベラル派判事が選ばれたことから多数派が逆転した。
そこからわずか数ヶ月でリベラル派が劇的な変化を起こしている様子をワシントンポストが伝えている。
その変化の1つが、新多数派による保守派出身の主判事(多数派が変わっても継続)から主要職務を切り離す判断を下したこと。
同主判事はこの急変を「クーデター」と称し非難している。
また、リベラル派の州の司法長官はウィスコンシン州内で医師が中絶手術を行うことを禁止する19世紀の州法を見直す訴訟を加速させ早々に最高裁に持ち込ませようとしている。
州の最高裁の多数派をどちらが握るかはウィスコンシン州のようなスイングステーツにおいて来年の大統領選の勝利者を最終確定する際に重要になる。
ウィスコンシン州ではこれまで15年間、保守派が最高裁の多数派を占めてきており、その間、共和党に有利となる投票者のID確認を求める州法や公的従業員の集団的交渉権への制限の設置、不在者投票箱の禁止、共和党に対する広範な選挙活動資金調査の終了に関する最終的な司法判断を下してきた。
今回4月の選挙で勝利したリベラル派判事は、自らの選挙活動において中絶の権利擁護や共和党に有利な選挙区に反対することを公約している。
公正な審判役を務めるべき判事候補というより政治家のようなキャンペーンであった。
現在米国ではウィスコンシン州を含め21の州で判事を州民が直接選挙で選び、他に17の州では知事等から任命された判事の継続において州民の選挙を必要となっている。
保守派は主要な州の最高裁の多数派を長年キープしている。
その戦略は、「犯罪に厳しい」という印象付けと共和党に近い企業や富裕層をスポンサーとして取り込むことにある。
これに対し、現在リベラル側が巻き返しを図ろうとしている状況にある。
中絶の権利や選挙権の解釈に加え、公的年金のESG投資と企業の気候変動リスクの開示、多様性やLGBTQに対する姿勢といった重大な問題に関し、連邦議会・政府における党派対立が各州の議会・政府に及び、それが州の裁判所に及んでいる。
客観的なデータや科学的な根拠に基づく政策論議を憲法の解釈に則って公正に判断するという三権分立における本来の裁判所の役割が、トランプ前大統領時の立て続けの保守系判事任命による中絶違憲判断のような従来判断の立て続けの転換により、司法判断の政治化が進み、州にも及んでいるということなのであろう。
2.聴くためのCDからZ世代の収集対象となったCD
20代前半を中心としたアメリカのZ世代の若者がCDを意識的に購入している様子をワシントンポストが伝えている。
LP版のアナログレコードの人気が高まり、売り上げが上昇中であるのに対し、コンスタントに低下してきているCDの売り上げだが、少なくともZ世代においてはブームになっている。
2002年にはアメリカの音楽産業全体の売り上げの96%を占めていたCDの売上は、昨年は3%にまで落ち込んでいる。
というのもアメリカの消費者は、音楽鑑賞ではオンラインのストリーミングサービスでダウンロードして音楽を“消費”するようになっているため。
ただ、この統計値には中古品の売買は含まれていない。
実際、収集されたCDはポケモンカードのトレード同様、収集愛好家の間でトレードが活発になされている。
特にアーティストのサイン入りのものの人気が高い。
楽曲のジャンルとしてはカントリーミュージックやKポップのファンにこのCD収集傾向が強い。
コロナ禍で自宅に閉じこもっていた若者が外出し、ショップに入り、自分の好みのアーティストのCDをそのジャケットの美観とともに選択し、購入するということが貴重な“行為”となっているようである。
また、Z世代にとってLPレコードでは高すぎるがCDは十分手が届く値ごろ感もあるようでもある。
ストリーミングでダウンロードした音楽を単に聞き流すのではなく、CDを所有する形でアーティストがつくり出す雰囲気をリスペクトし、応援したいという若者の様子を記事は紹介していた。
実際、CDを購入しているZ世代の若者には自宅にCDプレイヤーが無いものも多く、CDは日本でいう“推し活”的な目的でコレクションされているようである。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l 就任式で台湾との関係強化に触れたパラグアイのペニャ大統領
台湾と公式外交関係を持つ南米の国・パラグアイの首都・アスンシオンでは、サンティアゴ・ペニャ大統領の就任式が行われたが、そのペニャ大統領は就任演説で、
「台湾は兄弟のように感じている」と語り、協力関係を強化する意欲を示した。
これに対して、次期総統を目指す民進党の頼清徳副総統は、米国のハーランド内務長官と言葉を交わすなど、その存在感をアピールした。
尚、ペニャ大統領は演説の中で2度も台湾について言及、また来賓の紹介で頼副総統に触れた他、「地政学的な観点で台湾などの同盟国との協力関係を構築する。
台湾はその手本となる」とまで語っている。
l インドでアップルとの協力協定を締結したフォンハイ
鴻海(フォンハイ)グループは、インドの製造拠点を充実、新たな躍進となるであろう iPhoneの現地生産を強化しているが、インドメディアはアップルとこの鴻海グループが新たな協力協定を締結したと報じている。
鴻海グループは4億米ドルを投資し、インド第4の都市であるハイデラバードにアップルが「魔法を設計した」と宣伝を展開しているAirPodsの生産ラインを設立したいとしている。
また、鴻海は匯達の最新の“地上最強”AIチップ「GH200」のチップモジュールを搭載 グラフィックス処理装置(GPU)も鴻海が全面手配するとしている。
l 1.09にまで落ち込んだ中国の出生率
中国の中国人口・発展研究センターの推計により作成されたデータによると、中国の出生率は2022年には過去最低の1.09に下がったものと見られている。
人口が1億人の超える国の中では中国の出生率が最低になったとも見られている。
中国の出生率は、既に、韓国、台湾、香港、シンガポールと並んで世界で最低圏内に入るとされている。
中国政府は過去60年間で人口が初めて減少したことや急速な高齢化を懸念しており、出生率を引き上げるため金銭的な支援や保育施設の改善といった措置を打ち出しているがその効果は今のところ出ていないと言うことである。
中国はこれまで、将来にわたる経済成長を維持する為には、「適度な出生率」が必要があり、その為に教育や科学・技術に重点を置く方針を示してきているが、適度な出生率とは何かを含めて、実体は厳しいままとなっている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 韓国の富裕層の状況
スイスの金融大手であるクレディ・スイスが発表した世界の富に関する報告書となる、「グローバル・ウェルス・レポート 2023年版」によると、100万米ドル以上の資産を保有する成人が2022年は世界全体で5,939万1,000人と推計され、前年より350万8,000人減少している。
このレポートでは、韓国については、125万4,000人で世界10位となっている。
イタリア(133万5,000人)、オランダ(117万5,000人)、スペイン(113万5,000人)と韓国とほぼ同水準であり、世界全体の約2%を占めている。
また、5年後の2027年には205万9,000人に増え、イタリアの予想値である166万5,000人を上回って9位に上昇すると予想されている。
韓国の成人のうち、保有資産が世界上位1%に入る人は110万6,000人、世界上位10%に入る人は1,855万9,000人となっていると報告されている。
2022年末時点で世界の成人1人当たりの平均資産額は8万4,718米ドルで、前年対比3.6%減少している。
資産総額は454兆4,000億米ドルで同2.4%減少した。
インフレ、金利上昇、米ドル高による通貨価値の下落などの影響で2008年の世界金融危機以降初めての減少となっている。
l 韓国の防衛装備品に深く依存するポーランド
ウクライナと国境を接する、国際機関である北大西洋条約機構(NATO)加盟国でもあるポーランドは、韓国製戦車K2、自走砲K9などを動員しここ数十年で最大規模の軍事パレードを行ったと報告され、韓国の防衛産業は更に自信を強めている。
そして、ポーランド軍統帥権者となるドゥダ大統領は、軍事パレードの開始を伝える演説の中で、「ポーランド東部の国境防衛は国政の重要課題」と述べる中、韓国製の防衛装備品が重要になっていることを示唆した。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,323.53(前週対比+12.81)
台湾:1米ドル/31.82ニュー台湾ドル(前週対比+0.09)
日本:1米ドル/146.41(前週対比-0.51)
中国本土:1米ドル/7.2890人民元(前週対比-0.0036)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,519.14(前週対比-0.71)
台湾(台北加権指数):16,481.58(前週対比-35.08)
日本(日経平均指数):31,624.28(前週対比-1.72)
中国本土(上海B):3,064.075(前週対比-99.714)
4.日米オンライン交流のご案内
小生が理事を務めます一般社団法人日本国際教育協会の主催で9 月17 日(日)、10 月22 日(日)、11月19 日(日)および12 月17 日(日)の計4回、日米の中・高・大の学生同士のオンライン交流会を開催します。
詳しくは添付のチラシをご参照ください。
ご子息やご息女、お知り合いのお子様などで英語を使ってみたい人々に是非ご紹介いただければ幸いです。