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日賑グローバルニュースレター第325号

1.イスラエルーパレスチナ紛争で苦悩するバイデン政権

 

ワシントンポストが107日のハマスによる対イスラエルテロとその後のイスラエル軍によるパレスチナのガザ地区侵攻の今日までのバイデン政権内部の様子を特集した。

バイデン大統領自身は、50年前の1973年にイスラエルの第5代首相で初の女性宰相となったゴルダ・メアと面会してか感化され、ユダヤ人生き残りの地としてのイスラエルを意識し、同国への強い支持の気持ちを持つようになったという。 

一方で、バイデンは数多くの米国大統領が中東和平に関与しながら結局は和平実現がなされていない事実を見てきて、和平実現に深くコミットするリーダーがイスラエルとパレスチナの双方に現れない限り米国自身が努力しても和平実現は難しいと考えていた。

従い、大統領となってからの外交政策でも対中政策や対露ウクライナ支援に比べ、イスラエルーパレスチナ問題は優先度が低かった。 

かかる状況下でハマスのテロが発生したわけだが当初は政権としてというよりも個人としての強いイスラエル支持の気持ちが前面に出る発言が目立ち、イスラエルはもとより米国内のユダヤ系組織から高い評価を得たものの、アラブ系に対する意識はなされていなかった

その後、国内でもそれなりに強い影響力を持つアラブ系アメリカ人のリーダーや組織からの陳情を聞き、自らの発言がアラブ系アメリカ人にとって配慮を欠くものであったと謝罪をする場面も生じた。 

現状、米国内のアラブ系アメリカ人組織は元々アラブ系を排除しようとするトランプ前大統領は拒絶するものの、仮にバイデン大統領が今後目立ったガザ地区支援ができないならば来年の大統領選挙でバイデンにも投票しないと語っている

さらにはガザでの一般市民の死傷者が急増する中、バイデン政権内部でもイスラエル支持声明のトーンのあり方に不協和音が生じているという。 

バイデンにとっての不幸は、現ネタニヤフ政権が極右に近い政体であり、特に国家安全保障大臣のイタマル・ベン・グヴィルと財務大臣のベザレル・スモトリッチの二人の極右勢力をネタニヤフ首相自身が抑えきれないこと。 バイデン政権の誤算は、107日のテロ発生時にアメリカとしての立場をテロへの非難と平和追及という外交的理念を前面に表明すべきところを、上述のとおりバイデン大統領の個人的思いがこもったイスラエル支援の立場が先に出てしまったこと、そしてイスラエルの対応がバイデン政権の予想外のある種極端な反応を示していること。 

現状、バイデン政権にとって受け入れ難いのはイスラエル側がパレスチナの損耗被害と自国のそれとの対比率(何倍返しか)において常識を超える高い率を設定していること。

そこでブリンケン国務長官を何度も派遣して同政権に働きかけ、レバノンのヒズボラ攻撃を思いとどまらせ、バイデン自らがイスラエルを訪問してガザ侵攻へのブレーキや配慮を加えるようアプローチしたわけである。

今や、この戦争が長引くほどにバイデン政権の支持率が下がる状況にあり、ネタニヤフ政権への働きかけも厳しいものに変えつつある。 

ひとつのジェスチャーとしてヨルダン川西岸(ウェストバンク)でパレスチナ市民を攻撃したイスラエル人入植過激派に対する米国入国ビザの発給禁止の用意があるとバイデン大統領は語った。 

イスラエル政府高官はハマス殲滅まで1年かそれ以上戦い続けると語っているようだが、バイデン政権は大統領選でこれ以上不支持を増やさないために来年の早い時期に収束することを望んでいる。 

バイデン政権の主要閣僚であるブリンケン国務長官やイエーレン財務長官、マヨルカス国土安全保障省長官がユダヤ系アメリカ人であるように、政権内にはかなりのイスラエル支持のプレゼンスがあるものの、一方で人権価値を掲げるリベラルなバイデン政権としてガザ地区市民の被害をこれ以上増やすことは政権の致命傷と考える向きも多くいて内部で葛藤が繰り広げられているようである。

 

2.ビデオ会議の脳に与える影響

 

Scientific Reportという機関誌に発表されたオーストリアの大学での学生に対する実験結果をワシントンポストが報じた。 

35人の学生に150分のエンジニアリングの講義を行うにあたり、半分の学生は、第一週はzoomなどのビデオ会議で受講し、翌週は対面で受講、残り半分の学生は全くその逆で対面―ビデオの順に受講した。 

各学生は受講中の脳波と心電図をモニターされた。 

加えて、別途気分や疲労度の問診も受けた。 

これらの実験調査の結果、研究者は対面授業とオンライン授業とで顕著な違いを見出したと報告している。 

即ち、オンライン授業の場合、対面に比べ学生の疲労度が高く、脳は注意を払うことに苦労している様子が示された。 

問診結果も、対面の場合、「生き生き」と感じ、「楽しく」「アクティブ」な気分であったが、オンラインの方は「疲れて」、「眠く」、「うんざり」という気分であった被験者が多数という。 

総合的な分析結果として研究者はビデオ会議が参加した学生の心身に与えるダメージがあることは有意であり、オンライン授業は対面授業を補完することはあっても、代替として考慮すべきではないと結論付けている。 

ビジネスや家庭でのオンライン会議の影響については同様の研究を繰り返し、脳のより広い分野への影響を見る必要があると同研究者は記しているという。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  台湾、総統選挙状況

台湾の選挙当局は11月20日から24日まで総統候補者の申請を受け付けるとしている。

受付期間は意外に短い。

来年1月の選挙戦への統一候補擁立を巡る野党2党間の協議は依然として不透明のまま、申請時期を終えた。

即ち、来年1月の台湾総統選で、非与党の3陣営が目指してきた候補者の一本化が失敗に終わった。

中国本土に近く、2015年11月7日には、シンガポールで中国本土の習近平国家主席と首脳会談を実現させた当時の台湾総統であり、現在も国民党の実力者である馬英九前総統が突然表舞台に立ち、野党仲介に乗り出したことが、むしろ、中国本土の「介入」を多くの台湾国民に想起させたことも一因になったと一本化失敗との見方も出ている。

これに対して、与党・民進党は頼清徳副総統を選挙戦の正式候補者として既に選出している。

この中国本土と距離を置いていると見られている与党・民進党の頼清徳副総統は、早速に選管に立候補を届け出た上で、

「台湾は事実上の独立国で中国本土の一部ではない」と唱え、蔡英文政権の親米路線の継続を掲げている。

中国本土からの圧力に対抗する為、米国や日本などと協力して選挙戦を戦う意向を示しているとも見られている。

 

(2)  韓国/北朝鮮

 

l  IMFの韓国経済に対する見通し

客観的、科学的、中立的であると見られている国際機関であるところの国際通貨基金(IMF)の4条協議報告書によると、

「韓国経済は2028年まで2%台前半の成長率が続く見通しである。国内総生産(GDP)成長率は2023年の1.4%から2024年には2.2%に上昇し、それ以降は2.1~2.3%内で小幅な変動で推移する。

年度別では2025年に2.3%、2026年と2027年はいずれも2.2%、2028年には2.1%の見通しとなる。2023年と2024年の経済成長率見通しは中国本土の景気回復が反映されていないことから、今後、韓国の経済成長率見通しが上方修正される可能性があるものの、中期的な観点から見ると、2%台前半の経済成長率に留まる」との判断、見方を示している。

                                        

l  英韓連携

英国と韓国両国首脳は、北朝鮮による船舶移動を阻止する為の海軍合同哨戒の開催など、安全保障と技術分野での協力を強化することで合意している。

北朝鮮は国連制裁に違反して違法に瀬取りを行って外貨を獲得してきたとされており、こうした状況を受けての英国と韓国の連携である。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,300.36(前週対比-6.01)

台湾:1米ドル/31.63ニュー台湾ドル(前週対比+0.09)

日本:1米ドル/149.59(前週対比+0.03)

中国本土:1米ドル/7.1522人民元(前週対比+0.0589)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,496.63(前週対比+26.78)

台湾(台北加権指数):17,287.42(前週対比+78.47)

日本(日経平均指数):33,625.53(前週対比+40.33)

中国本土(上海B):3,040.972(前週対比-13.394)

 

4.【外国人材活躍応援フォーラム第1回セミナー】に登壇します

 

10月に登壇させて頂いた川崎市産業振興財団殿主催の外国人材に関するセミナーに引き続き、来週126日に同財団で主催されるイベント【外国人材活躍応援フォーラム第1回セミナー】に登壇させていただきます。 午後2時からミューザ川崎セントラルタワー5階にて行われます。 詳細は下記リンクをご参照ください。

https://www.k-nic.jp/event_detail/6675/

 

5. 寺島実郎さん主宰【経営創造未来圏人材養成プログラム】開講シンポジウムのご案内

 

一般財団法人 日本総合研究所から127日に開催の掲題シンポジウムの案内を入手しましたので添付のとおり共有させていただきます。

 

 

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【経営創造未来圏人材養成プログラム】開講シンポジウム(231207)ご案内.pd
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