1.国内経済の不調を輸出増で補う中国の格好の標的となっている米国消費市場
中国が不動産バブル崩壊など国内経済の不調に対し、国内消費拡大ではなく外需(輸出)を増大すべく国営製造企業を支援する形で過剰生産に走り、新たな米中の火種となりかねない様子をワシントンポストが報じた。
今年2月の統計で米国の中国からの輸入は1年前に比べ3.1%下がっているが、これは過剰生産やドル高のおかげで、実際の輸入量は増えている。
これは米国の消費者物価を下げるには良いことだが、バイデン政権が重視する製造業の雇用に関しては悪影響を及ぼしかねない。
中国の今年1月と2月の工場出荷高は前年同月に比べ7%も増大している。
これを2019年末時点と比べると25%も増えているという。
一方、米国の工場出荷高は2007年のピークに対して7%低いところで止まっている。
そして世界全体の工場出荷高における中国の貿易黒字の割合はトランプ前大統領が中国からの輸入の多くに追徴関税を課す以前の割合よりも高くなっている。
これは米中対立の新たな火種となりかねない。
また欧州との火種もある。 中国の自動車輸出はドイツの輸出を超えた。
中国の自動車生産は4千万台で1500万台が過剰生産、そのうちの500万台が輸出に回されている。
過剰生産のお陰で、中国のBYDが1万5千ドルの安さでEVを販売しており、結果として昨年世界で最も多くのEVを製造する会社の称号をテスラから奪い取った。
EUは中国政府がEV生産に補助を与えているとして中国車に追徴関税を課す方向で検討を開始した。
米国の場合は北米自由貿易協定(USMCA)においてメキシコで生産される中国のEVが米国に入ってもUSMCAの対象にはならない。
ただ、韓国など米国と自由貿易協定を交わしている国経由で米国に無税で持ち込まれる可能性はある。
先週、アメリカの鉄鋼労組はUSTRに対し中国の造船業の商慣行を調査するように陳情した。
曰く、中国は非市場価格で意図的にじっくりと市場シェアを奪っていき、最終的に世界市場を支配するという20年戦略と呼ばれる戦略を取っているというもの。
WTO加盟の21世紀初頭でこそ中国は輸出依存型でその経済を急速に発展させてきたが、その後は設備投資と不動産投資が経済成長の動力源となっていた。
それがゼロコロナ政策と不動産バブル崩壊でスチームを失う中、本来であれば経済の4割を占める消費を刺激する形で経済復興をはかるべきところを過剰生産の輸出増を目指す姿勢にEUはもとよりIMFも警鐘を鳴らしている。
安さの力をストレートに受け入れがちな米国市場経済という大きなエンジンにとっては、米中デリスキングなどといって相互依存を避ける現在の政策の効果もたかがしれず、その点でトランプ候補の掲げる対中100%関税が米国労働者には一層アピールするのかもしれない。
記事の中で「中国の貿易黒字の世界GDPに対する割合は1980年代後半の日本の貿易黒字の割合のほぼ倍」という表現や、「日本がアメリカのGDPを追い越す勢いであったころ」といった表現があって隔世の感がありました。
2.例年より2週間以上早く開花したワシントンDCの桜
かなりの暖冬でアメリカの首都ワシントンDCのタイダルベイズンの2千本の桜が去る3月17日日曜に満開を迎えたことをワシントンポストが驚きを以て伝えた。
あまりの早い開花に桜の管理を行う国立公園は同日曜にSNSのX(エックス)で「満開、満開、満開!」と発信、早めの来園を促した。
通常より2週間も早い今回の開花は、1921年の統計開始以来、2番目に最速の開花となった。
これまで一番早かったのは1990年の3月15日。
アメリカでの満開の定義はつぼみから6段階の最後の段階で、7割以上の桜の木が開花したときとなる。
仙台の北緯に近いワシントンDCだが、その今月の気温は平均よりも華氏で9度以上高く、氷点下の観測は2月26日以降一度もない。
満開を迎えた17日も20度越えで、さすがに気候変動の懸念を市民も感じているようである。
同様に気候変動が理由とみられる海面上昇の影響からタイダルベイズンの周りの防潮堤が劣化して約1.5m沈下しているという。
そのため、今後修復工事が数年にわたり行われ、その間、これらの桜の木は移動することになることから地元の人々に「スタンピィ」の愛称で呼ばれる桜も近々見納めとなる模様。
通常予想開花時期より前にスタートするワシントンDCの全米桜まつり(National Cherry Blossom Festival)は今年は3月20日から4月14日まで開催されるが、今年は実際の開花から2週間遅れることになる。
この桜の木の元祖が1812年に日本から寄贈された3千本もの桜の木であった歴史が今回の記事には無かったことが残念でした。
写真: ワシントンポスト
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l 共に軍事闘争への備えを強調する中台
国家主席、総書記、党中央軍事委員会トップの三役を占め、中国の軍統帥権者である習近平国家主席は、海上軍事闘争の準備を統一的に推進するよう要求している。
李強首相が、「軍事闘争準備を統一的に推進せよ」と発言したことに続いて、再度「軍事闘争」を強調したことになる。
中国は今年の中国本土の国防予算を1兆6,655億人民元で編成し、年間成長率目標値である5%より高い7.2%に拡大している。
習国家主席は、全国人民代表大会(全人代)人民解放軍及び武装警察部隊代表団会議に出席し、
「海上軍事闘争の準備、海洋権益の保護、海洋経済の発展を統一的に推進して海洋能力の経略を向上させよ」と指示した。
習国家主席はまた、「新興領域の戦略能力が国家の安全保障と軍事闘争の主動性に関係する。サイバー空間の防御システムを構築し、国家ネットワーク安保能力を向上させ、新型作戦力量の建設と運用モデルを大胆かつ革新的に探索して、新たな品質の戦闘力(新質戦闘力)を十分に解放・発展させなければならない」と求めたと報告されている。
これに対して台湾メディアは、懸念を示している。
台湾では、「戦争への備えと戦闘業務を確実にするべきである」「傭兵の精密度と闘争の費用対比効率を上げなければならない」
「軍事闘争を断固かつ柔軟に展開すべきである」「全ての行動は指揮に従わなければならない」
とし、台湾国内の連携の必要性を求める声が出ている。
l 大都市の不動産価格下落が続く中国
中国の不動産市況は更に悪化していると見られている。
最新の統計によると、2月の新築住宅価格は国内主要都市の85%近くで下落している。
国家統計局によると、大都市70都市のうち59都市で不動産価格は下落した。
1月から3倍近く下落する都市が増加している。
そして、残りの3都市は新築住宅価格に変化はないと回答し、8都市は価格が上昇したと回答している。
中国政府は不動産業界に追加の金融支援を実施し、中銀である中国人民銀行は2月にも住宅ローンの基準金利を引き下げてもいる。
今後数カ月で、これらの措置が中国の不動産市場の急激かつ悪化している市況を逆転、改善させるのに十分であるか否かが分かることとなろう。
l ハイパーループ磁気浮上列車の世界最速記録を立てた中国
これまでイーロン・マスクとリチャード・ブランソン・バージングループ会長のような世界の著名人が、未来交通手段と考え、開発に乗り出してきているが、商用化は容易ではなかった。
しかし、最近、世界各国がハイパーループ開発戦争を繰り広げ、技術的困難を一つずつ克服している。
中国は先月、ハイパーループ磁気浮上列車で世界最速の新記録を立て、カナダは乗客54人を乗せて時速1,000キロで走る列車が開発中となっている。
業界では、「ハイパーループにより遠距離を飛行機よりも早く行き交流する新しい時代が開かれる」と見られている。
(2) 韓国/北朝鮮
l 女性にとっての不平等を訴えた「韓国女性大会」
国際女性日である3月8日、ソウルでは、女性団体などによる「韓国女性大会」が開催された。
参加者らは、「韓国社会は依然として女性にとって不平等である」と訴えて行進した。
また、4月10日に予定されている総選挙を控え、「変えよう、女性有権者の力で」と声を上げた。
主催者によると、大会には約2千人が参加したとされ、参加者らは、韓国の男女の賃金格差は国際機関である経済協力開発機構(OECD)の加盟国で最下位であると指摘、過去に、「構造的な性差別はない」
と発言したユン・ソクヨル大統領の下で女性政策は後退しているとし、「誰もが平等に働く権利を保障する必要がある」「性暴力のない日常を」などと訴えている。
l ジンエア―本年5月に仁川―宮古(下地島)線就航
韓国の格安航空会社(LCC)であるジンエア―は、本年5月に仁川―宮古(下地島)線を就航すると発表した。
同社の単独路線となり、5月29日から週5往復するとされている。
下地島行きは仁川国際空港を午後0時40分に、仁川行きは下地島空港を午後4時20分にそれぞれ出発する。
飛行時間は約2時間半で、ボーイングB737-800(189席)が投入される。
同社は、「国内航空会社のうち宮古島への定期直行便を開設するのは初めて。旅行客の利便性が大きく向上するだろう」と説明している。
更にまた、韓国人観光客が日本に押し寄せるのか注目しておきたい。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,328.33(前週対比-9.69)
台湾:1米ドル/31.51ニュー台湾ドル(前週対比-0.13)
日本:1米ドル/148.70(前週対比-1.62)
中国本土:1米ドル/7.1964人民元(前週対比-0.0031)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,666.84(前週対比-13.51)
台湾(台北加権指数):19,682.50(前週対比-102.82)
日本(日経平均指数):38,707.64(前週対比-981.30)
中国本土(上海B):3,054.636(前週対比+8.617)
4.外国人材採用・雇用セミナーに登壇します
4月9日(火)午後2時から開催されます外国人雇用支援センター主催の掲題のセミナーに講師役として登壇します。
「グローバル化の中で期待されている高度外国人材の活用」というテーマでお話させて頂きます。
詳細は下記リンクでご確認いただけますと幸いです。。