1.過去の世論調査と選挙結果の誤差から読み解く米国大統領選勝敗のゆくえ(現状トランプ有利)
ワシントンポストが2012年以降の大統領選の選挙直近の世論調査結果と実際の選挙結果の誤差の傾向を分析した。
まず選挙結果を左右すると見られる激戦州7州の状況は、ハリス候補がネバダ、ミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンで0~3ポイント程度トランプ候補をリードし、ノースカロライナ、アリゾナ及びジョージアでトランプ候補が0~2ポイント程度リードしている。
ただ、直近2週間ではトランプがアリゾナ、ノースカロライナ、ペンシルバニアで+0.1~+0.4ポイント支持を増し、ジョージアとミシガンで+0.1~+0.3ポイント支持を増やしたハリスよりもわずかながら勢いがある。
さらに、2020年のバイデンvs.トランプの場合のこの7州での選挙直前の世論調査結果と実際の選挙結果の誤差がそのままハリスvs.トランプに反映されるとすると7州全てでトランプが勝利する分析結果となっている。
これを2016年のトランプvs.ヒラリーの場合の誤差で反映すると、ネバダ州のみハリスが勝利し、残り6州はトランプ勝利となる。
最後に2012年のオバマvs.ミット・ロムニーの場合の誤差を民主党vs.共和党として反映するとアリゾナ州のみトランプが勝利し、残り6州はハリスが勝つことになる。
これらの誤差の理由には2012年であれば選挙直前の10月29日にニュージャージー州などを襲って大被害をもたらしたハリケーンサンディへのオバマ政権の対応の良さが、2016年であればクリントン候補が国務長官時代に電子メールを私的に使ったことへのFBIの調査が発覚したオクトーバーサプライズがあげられる。
2020年の場合、バイデン大統領の長男の問題が10月に発覚したが、トランプ大統領も同月コロナに感染したりと、どっちもどっちであったが、いわゆる“隠れトランプ”が世論調査にあまり反映されていないということが事実であればやはり有権者の投票行動は選挙直前の世論調査結果よりもトランプに有利に出るとも考えられる。
今日まさにフロリダを襲っているハリケーンミルトンのもたらす被害とバイデン・ハリスの対応がオクトーバーサプライズとなるか、はたまた全く別のオクトーバーサプライズでトランプ有利の状況を覆せるか注目される。
2. イスラエルのモサドによるヒズボラ幹部ポケベル破裂工作の舞台裏
日本では1990年代に商用利用がピークとなったページャー、いわゆるポケベルは、その後利用者が激減し、2007年にはNTTが商用サービスを終了している。
一方、レバノンの反イスラエル勢力のヒズボラの幹部が最近数千人単位で死亡ないし重傷を負ったのは彼らが利用したポケベルが破裂したことが原因である。
これは通称モサドと呼ばれるイスラエルの諜報特務機関による工作であることが判明しているが、その背景や手順についてワシントンポストが特集を組んだ。
モサドが主にマークするイスラエルにとっての潜在脅威はヒズボラの他に現在イスラエルが戦闘中のハマス、同じくイエメンのフーシ派、その他3つの軍事組織があり、それらの後ろ盾としてイランが様々な支援を提供している。
この6つの組織の中でイスラエルにとって最大の脅威がヒズボラであるとの認識からモサドはその組織への工作を2015年に開始。
遠隔起動可能な小型爆薬と盗聴装置の付いたトランシーバーをレバノンに流通させ、ヒズボラの幹部が利用するように仕組み、彼らの会話を盗聴し始めた。
ただ、大型の内蔵バッテリーが重いため通信以外では常に携帯するものではなかった。
その爆薬を起動させることなくそこから8年後の昨年、モサドはヒズボラの幹部が常に携帯するポケベルでの工作を開始。
通常の携帯電話では盗聴や位置情報が洩れる懸念からヒズボラの幹部は暗号化したメッセージのやりとりをポケベルで行っていた。
2023年にそのポケベルで有名ブランドの台湾製のアポロ製ポケベルのまとめ買いの売り込みがヒズボラに対しあったという。
売り込みはヒズボラに信用のあり、アポロ社と関係のある中東の女性販売員によってなされた。
彼女は自身の販売会社を持っておりアポロ社製品を取り扱うライセンスを取得していた。
実際彼女は過去にアポロ社の製品をヒズボラに販売してきており、その延長線上で2023年にAR924という既存品より一回り大きいポケベルのまとめ買いをプレゼンした。
そのメリットは充電が容易なことと、バッテリーの容量が大幅に拡大して長持ちすること。
ところがこのAR924の生産は下請けに出され、実際にはモサドの監視下で、イスラエル国内で組み立てられていた。
このポケベルは、重さわずか80グラム弱で、バッテリーパックの中に高性能爆薬が少量とモサドからの特殊無線信号受信で起爆装置を作動させる装置が組み込まれていた。
この爆薬と起爆装置は非常に慎重に隠されていたのでヒズボラが通常行う分解目視検査はもとよりX線検査でも見つけられなかった。
アポロ社も前述の中東の女性販売員にもこのモサドの計画は一切知らされていなかった。
ネタニヤフ首相をはじめ、イスラエル政府幹部が初めてこのモサドの工作を知ったのは先月9月12日で、モサド幹部とヒズボラ対策を打ち合わせた際であったという。
ヒズボラ幹部に行きわたった数千ものポケベルを一度に起爆させれば組織に甚大な損害を与えることは間違いないが、一方で同組織との全面戦争に陥るリスクも懸念されていた。
その点、米国はヒズボラのトップのナスララ氏に対し、レバノン南部国境沿いでのイスラエルに対する攻撃を停止するよう仲介していた。
その間、モサドはナスララ氏の居場所は常に把握していた。
ナスララ氏は結局イスラエルがガザで停戦に応じない限りヒズボラとしても停戦に応じないと回答していた。
そうしたアメリカの仲介工作が続いていた最中の9月17日、レバノンとシリアにいた数千ものヒズボラ幹部のポケベルが一斉に鳴り響き、画面には「暗号メッセージが届いている」との表示が映し出された。
そのメッセージを読むためには両手でボタン操作が必要で、その操作が起爆を招いた。
両手で操作することで多くのヒズボラ幹部は死亡或いは両手を失い戦闘能力を削がれることとなった。
翌18日には2015年に仕込み済みであったトランシーバーも同じ手口で炸裂し、ヒズボラに多大な損害を与えた。
そして9月27日、イスラエルへの攻撃を止めないナスララ氏の居るビルへ、イスラエル空軍が2千ポンド爆弾が投下、彼の暗殺ミッションが成功裏に遂行された。
これら一連の工作や任務はアメリカに知らされていなかったという。
ヒズボラの脅威に注意を向けすぎたためか、昨年10月7日のハマスのテロ攻撃を防げなかったネタニヤフ首相が、自らの汚名返上としてヒズボラ攻撃を位置づけているように見えるが、実際にはハマスのテロ計画を事前に食い止められなかったモサドの名誉挽回のデモンストレーションであったのかもしれない。
3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化
(1) 中国・台湾
l NVIDIA排除に動く中国の影響
中国は、米国のNVIDIA製品に代わって、中国国内の人工知能(AI)チップを購入するよう国内企業への圧力を強化していると台湾では見ており、これは半導体産業を発展させ、米国の制裁に対応する為の中国本土政府の取り組みの一環であることから、こうした傾向は今後も続くと見ている。
そして、情報を受けて、NVIDIAの株価や、そのNVIDIAと関係を持つ台湾企業の株価も総じて弱含みで展開している。
台湾人系創業者に率いられるNVIDIAとその関係台湾企業の動向は、台湾経済そのものにも大きな影響を与える可能性があり、注視、フォローしたい。
l CPTPP参加を強く求める台湾
台湾政府は、「環太平洋パートナーシップに関する包括的かつ先進的な協定(CPTPP)」への参加を積極的に求めており、林嘉龍外相は、加盟国に対して、
「経済や貿易とは関係のない政治面を考慮をせずに、台湾の申請を公平かつ客観的に扱ってほしい」と力強く呼び掛けた。
(2) 韓国/北朝鮮
l 米中対立を注視する韓国半導体産業
韓国国内では、「中国政府が自国企業に対して、米国のNVIDIAの人工知能(AI)半導体の使用を事実上禁止した」と言うニュースに関心を示すと共に、
「中国政府当局は自国企業にAIモデルを開発して運営する際に使用されるNVIDIAの中国用AI半導体であるH20を購入しないよう勧告する指針を下したことは間違いない」
との見方が強まっている。
これを受けて、韓国の半導体産業では、米中半導体戦争の動向を警戒すべきとする声と、むしろ、韓国勢にとって、これを利用してビジネスチャンスを拡大術はと言うしたたかな声が出ている。
l 中国造船業界動向に警戒感を強める韓国造船業界
韓国は日本の後、造船大国となったことを自負している。
そして。今の最大のライバルは中国の造船業界と認識している。
従って、その中国の造船業界に対する関心は高いが、今般、その中国で、中国の1位、2位の造船会社間の超大型合併が内定したと見て、緊張感を高めている。
即中国の中国船舶工業グループ(CSSC)と中国船舶重工業グループ(CSIC)は、合併の最後の難題となっていた7社の子会社の合併問題でも合意をし、最終合併が成就すれば、新設造船所は資産規模4,000億人民元となり、韓国最大の造船会社であるHD現代重工業の資産規模の4倍の水準に達すると警戒感を示している。
更に、売上高、船舶受注量など主要指標で断然世界1位となるグローバルトップ企業となり、年間営業利益見通しも1,000億人民元に達するとし、警戒感をさらに強めている。
l 中国、日本、台湾がリードする訪韓外国人旅行者
韓国の仁川国際空港公社が発表した、外国人の韓国旅行に対する意識調査の結果によると、海外旅行に行きたいと考えている中国人の75%、日本人の55%が旅行先として韓国を希望していると報告している。
当該調査は6月21日から7月1日まで行われ、対象者はこの3年に海外旅行をしたことがあるか、今後1年以内に海外旅行に行きたいと考えている中国、日本、台湾で暮らす1,500人(各500人)とされている。
回答者のうち、中国人の約75%、日本人の55%、台湾人の49%が1年以内の韓国訪問を希望していると発表された。
また、希望する滞在期間の平均は中国人9日、台湾人6日、日本人4日であった。
1日の平均支出予定額は中国人が87万ウォンで最も多く、日本人は36万ウォン、台湾人は35万ウォンとなっている。
[主要経済指標]
1. 対米ドル為替相場
韓国:1米ドル/1,346.41(前週対比-33.93)
台湾:1米ドル/32.29ニュー台湾ドル(前週対比-0.78)
日本:1米ドル/148.64(前週対比-5.45)
中国本土:1米ドル/7.0176人民元(前週対比-0.0066)
2. 株式動向
韓国(ソウル総合指数):2,569.71(前週対比-80.07)
台湾(台北加権指数):22,302.71(前週対比-520.08)
日本(日経平均指数):38,635.62(前週対比+1,193.94)
中国本土(上海B):3,336.497(前週対比+248.968)
4.一般社団法人日本国際教育協会(JGE)主催立食パーティー(11月1日)のご案内
小生も理事を務めますJGEの設立6周年と、ワシントン日米協会理事長を長く務めたジョン・マロットJohn Malott 大使の来日機会を捉え、立食レセプションを開催いたします。
米国大統領や連邦議会選挙の数日前でもあるため、登壇者に佐々江賢一郎元駐米大使・JGE名誉会長を迎え、お話を伺う機会を設けます。
米国やワシントンDCに駐在、留学、出張、旅行、友人つながりなどのある方、あるいは米国に関心のある方、是非お集まりください。
皆さまの配偶者・パートナーの方のご参加も歓迎いたします。
参加される方は、下記リンクから現れるフォームにお名前などをご登録ください。
配偶者・パートナーと参加される方は、お手数ですがそれぞれご記入ください。
参加登録後に欠席に変更される場合は、10月24日(木)までに下記2名にご連絡をお願いいたします。
1) 日時 2024年11月1日(金曜日)18:30~20:30 (開場18:00)
(遅参・中途退出自由)
2) 登壇者(登壇開始予定 19:00より)
佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長、元駐米日本大使、日本国際教育協会名誉会長
ジョン・マロット 前ワシントン日米協会理事長、元米国国務省日本部長
(モデレーター)飯田香織 日本放送協会 解説副委員長、元ワシントン支局記者、元ロサンジェルス支局長
3) 会場 Good View Dining
101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-11-5
中央大学駿河台キャンパス19階
https://goodview-dining.jp/surugadai/coupon_access/
・JR御茶ノ水駅、東京メトロ新御茶ノ水駅から徒歩3-5分
4) 会費 9,000円 立食形式、飲み放題(当日現金でお支払いください。)
5) 出席登録用のリンク
https://forms.gle/vJVRhQ9sSXCrRzaLA
問合せ先:一般社団法人 日本国際教育協会
奥 智之 tomoku9@aol.com
神尾りさ japanglobaleducation@gmail.com
(略歴)
佐々江賢一郎 日本国際問題研究所理事長
1974年外務省入省。総理大臣秘書官、アジア大洋州局長、外務審議官、外務事務次官などを経て2012~18年駐米日本大使。2018年6月から日本国際問題研究所理事長。
ジョン・マロットJohn Malott 大使
2006~2017年までワシントン日米協会Japan-America Society of Washington DC理事長。国務省の外交官として、ベトナム、インド駐在や、大阪総領事、本省の日本部長、駐マレーシア大使などを歴任。2017年旭日章受章。
ワシントン日米協会在任中は、同協会が主催する日本語を学校で学ぶ米国高校生向けの日本語クイズ大会Japan Bowlや、ワシントンの桜の季節に開催するSakura Matsuriなどの拡充に尽力した。
主催団体:一般社団法人 日本国際教育協会Japan Global Education
2018年11月に日本で設立された、日本と諸外国の人々の相互理解の促進団体。事業として、日本や世界各国における日本語・日本文化関連大会の運営支援、異文化交流、国際相互理解を担う人材の育成・支援事業などを行う。
https://www.japanglobaleducation.org/