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日賑グローバルニュースレター第346号

1.第二次トランプ政権のDOGEは真に国益に沿えるか?

 

バイオテック分野の投資家として成功して財を成したビベック・ナマスワミ氏はイーロン・マスク氏と共にDOGEと呼ばれる政府効率化省のトップを務めることになるが、彼がチェックする連邦政府機関の中に米国食品医薬品局(FDAが含まれている。

ワシントンポストは今週、ナマスワミ氏が一貫して「FDAによる新薬承認のプロセスは非効率であるとしてFDA自身の必要性を含め抜本的見直しを行うべき」と批判していることが我田引水である可能性について報じた。

彼は「FDAは新薬承認後の患者の安全確認のための監督の方にもっと注力すべきで、新薬開発のためのコストや時間を増大させるべきではない」と主張している。 

彼がFDA攻撃のやり玉に挙げているのが、新薬承認のために臨床試験を2度行うことを求める要件。 ナマスワミ氏はこれを1度にすべきと主張する。 

一方、ナマスワミ氏は新薬開発ベンチャーのRoivant Sciencesを創業しており、うまくいけば第二次トランプ政権下で3種類の新薬の承認を見込み、それは現在の彼の保有株式価値6.7億ドルを大幅に増大させることとなる。

FDAでも既存の治療法が無く、新薬のみが希望の星である患者が多い症状に対しては、承認プロセスを加速するファストトラック制度を持っている。 

これは通常よりも少ないエビデンスで新薬の流通を承認するものだが、製薬会社は承認後も継続的にその効果を検証し続けることが条件となっている。

昨年の新薬申請55件の内、9件はこの条件付き承認を受けているが、ナマスワミ氏はそれでは不十分だと主張する。

実際、第一次トランプ政権最後の2020年には新薬承認の半分以上が一度の臨床試験のみで承認されている。 

トランプは、かねてよりFDAに厳しい批判を浴びせていたマーティ・マカリィ氏を次期FDA長官に任命すると1122日に発表、ナマスワミ氏もこの人選を歓迎している。 

トランプ陣営は連邦政府におけるDOGEの位置づけや役割を詳細には示していないが、仮に政府に対する諮問機関として位置づけるならばイーロン・マスクもビベック・ナマスワミも政府職員の利害相反を規制する法律に従う必要はないと見られている。

外交をビジネスの“取引”感覚で推進し、官僚機構をビジネスの切り口で効率化していくことは、透明性や説明責任さえ伴っていれば有権者にとってはむしろわかりやすく、心地よいところもあるかもしれぬが、我田引水があるとすれば、国民の健康・安心安全を含め正しく国益を擁護しようとする真のステーツマンを求める声もいずれまた出てくるのかもしれない。

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2. トランプ就任を“脅威”から“好機”に代えようとするウクライナ(ワシントンポスト)

 

バイデン政権によるウクライナ支援に批判的であったトランプ陣営が大統領選で勝利したことで、ゼレンスキー大統領以下のウクライナ指導層は当惑しているかといえば、むしろトランプ新政権の方に対ロ戦争の好転の支援を得られる可能性があると大いに期待している様子をワシントンポストが報じた。 

“取引”を外交に多用するトランプ大統領に対し、米国の国益となる“ビジネス”をちらつかせて支援を勝ち取ろうとしているという 

ウクライナ側はバイデン政権のウクライナ支援が及び腰でかつ遅いことにフラストレーションを溜めていることから、トランプのウクライナ支援への否定的な発言にもかかわらず、トランプ第一次政権中にウクライナに殺傷兵器ジェブリンミサイルの売却を許可した事実に焦点を当て、そのトップダウンの決定力と迅速さを賞賛し、その繰り返しを期待している

ちなみにその前のオバマ政権はジェブリンのウクライナへの売却を長い間拒絶していて、結果としてロシアによる侵攻を容易にした。 

トランプのロシア疑惑が生じた際も、トランプ自身、このジェブリン売却を例に、自らが如何にロシアに対して強硬であったかの例として使っていた。 

従い、今回もバイデン政権との比較でトランプ政権の方が対ロシアで力を発揮し、この戦争を終結させられるというトランプの自負をモチベーションとしてウクライナ支援を引き出させようとしているという。 

もしトランプが本当にアメリカを偉大な国にしたいなら、ウクライナがロシアに飲み込まれないように力を発揮すべきである。なぜなら世界の安全保障の監督者としてのアメリカのイメージが取り返しのつかないところまで落ちてきているためである」とウクライナの議員のヴォロディミール・アリエフ氏は語る。 

ウクライナへの支援を継続強化することでロシアの脅威を抑え込み、(バイデン政権にはできなかった)アメリカの偉大さの復活を実現する、というシナリオである。

一方、第二次トランプ政権では副大統領のバンスは上院議員の段階からウクライナ支援への反対を表明しており、イーロンマスクはスターリンクのインターネットへのアクセスの支援は提供したものの、ゼレンスキー大統領を批判したり、アメリカとしてのこの戦争への役割には疑問を呈していることからウクライナ側にとって予断を許さない状況ともいえる。

そこでゼレンスキー大統領以下ウクライナの指導層が次の手として考えているのがウクライナ国土にふんだんにある天然資源の利権を米企業に優先的に提供すること。 

実際このストーリーの前振りをゼレンスキー大統領が今年9月の訪米時にトランプ候補に対し「対ロシア勝利計画」に含める形でプレゼンしている。 

ウクライナは天然ガスの埋蔵量は欧州一の量を誇り、リチウムを含む鉱物資源もふんだんにある。 

イーロンマスクが所有するテスラのEV事業の将来にとっても魅力のある話となっている。 

ビジネスの取引の発想を外交に取り込むトランプにとり、この天然資源の“取引”には触手が動くのではとウクライナ側は期待する。 

リチウムが大量に埋蔵されている場所は現在の対ロ戦前線からは離れた国の中心部にあるものの、既にロシアが占領している地域や前線に近いところにも埋蔵されているという。 

同国のリチウムの総埋蔵量はEVのバッテリー1500万台分に及ぶ。 

トランプに極めて近いリンゼイ・グラハム上院議員はウクライナを何度となく訪れており、ウクライナを「数兆ドルものレアアース資源の里」と称し、「この地を絶対にロシアに奪われないことがわれわれの国益にかなう」と語っている。 

第一次政権よりもさらにビジネス経験者を多く登用する第二次トランプ政権が対ウクライナ支援でどのような判断を示すか注目される。

 

3. 東アジア情勢 -愛知淑徳大学ビジネス学部真田幸光教授の最新レポートを弊社にてダイジェスト版化

 

(1)  中国・台湾

l  トランプ勝利でアリゾナ州での製造工場完成式典の延期を決めたTSMC

半導体ファウンドリー大手の台湾積体電路製造TSMCの米国・アリゾナ州初のウェハーファブは当初、本年12月初旬に工事完成式典を開催する予定となっていたが、トランプ氏の大統領選挙勝利を受けて、TSMCは式典を延期すると招待者に通知していると台湾国内では報じられている。

 

l  初外遊で太平洋島嶼国を訪問する台湾の頼総統

台湾政府・総統府は11月22日、頼清徳総統が11月30日~12月6日、マーシャル諸島、ツバル、パラオの太平洋島嶼国3カ国を訪問すると発表した。

5月の就任後、初めての外遊となる。

米国を経由すると見られるが、総統府は、「計画中で明らかに出来ない」としている。

 

l  米国の政権交代の狭間で積極外交に出る中国

習近平国家主席は、ペルーの首都・リマで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で演説し、2026年に議長国を務めると表明した。

2001年と2014年に続く3度目の議長国である。

習近平国家主席は20日、ブラジルの首都・ブラジリアでルーラ大統領と会談した。

両首脳は、戦略的パートナーシップの格上げで合意し、習近平国家主席自らが計画推進する、中国本土の巨大経済圏構想である「一帯一路」で協力することでも一致している。

習近平国家主席は更に、19日までに、ドイツのショルツ首相ら欧州3首脳とも会談している。

米国での政権交代を前に、欧州主要国との関係の安定化を図る狙いがありそうであるとの見方が強まっている。

また、中国の董軍国防相とインドのシン国防相は11月20日、訪問先のラオスで会談した。

国境紛争を巡って10月に緊張緩和に向けて合意して以来、国防相同士による会談は初めてとなる。

 

(2)  韓国/北朝鮮                                  

l  トランプ勝利の影響を感じつつある韓国経済

米国大統領選で、トランプ元米大統領の当選が確定して以降、外国為替市場が混乱、ウォンの対米ドル為替相場が急落するなど、韓国経済を見る上で、変動要因が増しており、韓国の金融当局は警戒感を示している。

そして、韓国政府・金融監督院は、市中銀行・外国系銀行資金担当役員を呼び、外国為替部門リスクを点検することにしている。

具体的に、金融監督院は、パク・チュンヒョン銀行担当副員長が主宰する形で、国内市中銀行と外国系銀行の国内支店10カ所の外国為替・資金担当役員を招集して外貨流動性状況点検会議をする計画があると発表している。

金融監督院はこの会議に於いて、今後の外国為替市場と国際金融市場全体の見通しをそれぞれヒヤリングし、為替レートの混乱に伴う外国為替部門の影響と対応計画を議論するとしている。

また、銀行別の外貨流動性状況を確認、管理計画も議論するとしており、外貨資金繰りの混乱に伴うディフォルト・リスクにも丁寧に対応していきたいとしている。

一方、韓国国内では、米国のトランプ次期大統領が米国で生産された電気自動車(EV)に支給する最大7,500米ドルの補助金(税額控除)を廃止する案を本格検討すると報じられていることを受けて、一時期、韓国株式市場では、LGエナジーソリューション(12.09%安)、三星SDI(6.81%安)など電池関連銘柄の株価が一斉に急落すると言う事態が発生した。

韓国電池業界は補助金継続を前提として、最近米国への大規模な投資を決めており、電池大手3社の対米投資額だけで50兆ウォンを超えている。

これについて、韓国政府・産業通商資源部は、「インフレ抑制法による補助金廃止は決まっておらず、不確実性に備えて様々なシナリオを検討し、今後米国側とも協議を行う計画である」

として、事態の沈静化を図ろうとしている。

いずれにしても、トランプ次期大統領は選挙の過程でバイデン政権による巨額の補助金について、「新手のグリーン詐欺である」と強く批判し、全面廃止を示唆してきており、韓国だけでなく、日本としても動向をフォローしたい。

更に、韓国国内では、「鉄は国家なり」と呼ばれる韓国の主力産業である鉄鋼が深刻な危機に陥っていると見られている。

グローバル景気不況の中、中国の低価格製品攻勢、そして米国トランプ2期政権発足による関税引き上げ懸念、電気料の引き上げまで重なった、「三高」の中で世界6位の鉄鋼生産国である韓国は、大々的な構造調整と減産に突入しなくてはならず、ここでも産官学・金融力を合わせた対応が必要であるとされている。

 

l  第二次トランプ政権に備える韓国政府

韓国政府・産業通商資源部のチョン・インギョ通商交渉本部長は、米国大統領と議会の上下両院の多数派を共和党が握ることが確実になったことに言及しながら、

「韓国の対外環境は全般的に変化が避けられない。韓国企業の経営の不確実性を最小化する為、全ての能力を結集して官民が共にシナリオ別に徹底的に対応しなければならない」

とのコメントをしている。

同部はトランプ前大統領の再選が決まった後、半導体、自動車、2次電池など米国の政治環境の変化により受ける影響が大きいと予想される業界の関係者らと相次いで懇談会を開き、官民レベルの共同対応策を模索している。

貿易赤字の解消を自国の経済再建の為の公約として掲げたトランプ氏が大統領就任後、対米貿易黒字国の韓国にも貿易で圧力を加えるとの見方が出ている中、韓国政府は液化天然ガス(LNG)を中心に米国産エネルギー輸入を大幅に拡大して貿易収支を管理するなどの具体策を検討している。 

産業通商資源部は、「今後も業界の懸念や要望を聴取し、主な対米通商懸案に対するシナリオ別対応戦略を点検する」とし、トランプ政権に対する警戒感を示しつつ、臨機応変なる対応をしていく体制を構築してきている。

 

l  日韓航空旅客数過去最高を更新中

本年1~10月に韓国と日本を往来した航空旅客数は前年同期対比32.9%増の2,056万6,186人となり、過去最高を更新したと、韓国政府・国土交通部は発表している。

年間最多は、2018年の2,135万人であり、今年の月間の旅客数が200万人程度であることからすると、早ければ、11月中にも年間の最多も更新される見通しとなっている。

昨年から円安が続いたことで日本を訪れる韓国人観光客が増え、これが主たる背景となって旅客数が増えたと見られている。

韓国の航空各社は需要を反映し、先月末からの冬ダイヤで日本路線の便数を増やしてもいる。

 

[主要経済指標]

1.    対米ドル為替相場

韓国:1米ドル/1,402.40(前週対比-4.89)

台湾:1米ドル/32.56ニュー台湾ドル(前週対比-0.05)

日本:1米ドル/154.72(前週対比+0.22)

中国本土:1米ドル/7.2455人民元(前週対比-0.0146)

 

2.      株式動向

韓国(ソウル総合指数):2,501.24(前週対比+84.38)

台湾(台北加権指数):22,904.32(前週対比+161.55)

日本(日経平均指数):38,283.85(前週対比-359.06)

中国本土(上海B):3,267.192(前週対比-63.534)

 

4.中東フリーランサー報告32

 

三井物産戦略研究所の大橋誠研究員から掲題のレポートをいただきましたので共有いたします。

おおはしさんからは下記メッセージをいただいています。

 

前号発出の後、注目の米大統領選挙が行われましたが、選挙当日まで「歴史的大接戦」との報道が、一夜明けると「記録的大敗(ハリスの)」になり、しかも即日「だからハリスは負けたんだ」とのしたり顔の解説が紙面を覆ったのにはさすがに驚かされました。そこまでわかっていたのなら、何故もっと早く報じてくれなかったのかと。今後の米国の分断の悪化を懸念する声もありますが、「記録的大敗」ならば、もう分断ではなく、いかに敗者をケアするかの段階かと思いますが、そうなると結局敗者は誰だったのかと言う空虚な疑問も残ります。

そんな中、トランプ2.0に向けての私見を末尾に述べさせて頂きました。ご批判をお願いします。

 

 

大橋 誠

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